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Google Cloud Next Tokyo 26で見えた、AIエージェント全社展開の現実味

2026.8.27

はじめに

Google Cloud Next Tokyo 26に参加してきました。今回のイベント全体を通して強く感じたのは、Google Cloudが「AIエージェントをどう作るか」ではなく、「AIエージェントをどう全社展開し、業務の中で安全に使わせるか」まで踏み込んできたという点です。

新橋駅経由でゆりかもめに乗ってビッグサイトへ。

今回は南展示場開催です。8時台での移動だったので、潰れるほどの混雑ではありませんでした。

前から7列目くらいに着席。

基調講演は10時開始でしたが、9時ごろに会場に到着し、ノベルティのクッションをゲット。

AWS Summit Japan 2026との比較

少し前に海浜幕張で開催されていたAWS Summit Japan 2026では、AIエージェントを業務にどう使うか、Bedrockや各種AWSサービスを組み合わせてどう実装するか、という話が中心だった印象があります。Bedrockはモデル選択の自由度が高く、従量課金で始めやすく、開発者が自分たちの業務やシステムに合わせてエージェントを組み込むには強力な選択肢です。(私も現在プロジェクトで検証で使っていますが、AWSのコンソール上ですぐテストできる点は非常に魅力的です。GCPのAgent Searchでもできます。)

一方で、Google Cloud Next Tokyo 26では、もう一段違うメッセージが出ていたように感じました。それは「Gemini Enterpriseを入口にすれば、企業内のデータやSaaSにセキュアにアクセスできるAIエージェントを、全社で使えるようになる」というものです。

Google Cloud Next Tokyo 26のキーワード

今回のキーワードは明らかにGemini Enterpriseでした。Gemini Enterprise Agent Platform、ADK、A2A、MCP、Agent Identity、Agent Gateway、Agent Observability、Model Armor。これらはすべて、AIエージェントを本番運用するための部品です。つまり、デモで動くエージェントではなく、企業の中で権限を持ち、ログが残り、危険な接続を制御し、コストや利用状況を監視できるエージェントを作るための仕組みです。

重要なのは、Gemini Enterpriseが単なるチャットAIではないという点です。Google DriveやGmailだけでなく、Microsoft 365、SharePoint、Jira、ServiceNow、Salesforce、Slack、GitHubのようなSaaS、さらにカスタムMCPや他クラウド上のデータにも接続していく構想があります。(方向性としてはMicrosoft Copilotと同様であり、今後はどの業務OSを中核として構築するかが焦点となります。)

企業にはAIが接続できないデータが90%眠っている

それから、企業の中には「ダークデータが90%存在している」、という話も印象的でした。これは、AIに接続されていないデータ(人間の頭の中にあるものも含む)のことを指していて、AIを業務に溶け込ませ企業価値をさらに出すためには、このダークデータの表出化も重要になると感じました。

全社員にGemini Enterpriseを展開するメリットデメリット

これまでは、Gemini Enterpriseと同じシステムを実現しようとした場合(Microsoft Copilotはあります)、RAG基盤を作り、ベクトルDBを用意し、認証・権限管理を設計し、MCPサーバーやAPI連携を作り、ログや監査、コスト管理まで自前で考える必要がありました。AIやクラウド、データ基盤に詳しくない企業にとって、これはかなり重いです。

Gemini Enterpriseは、この複雑さをかなり解消してくれます。実装ではなく、接続先、権限、公開範囲、エージェント審査、利用状況の管理に集中できるようになります。

もちろん、全社展開するだけでは成果が出ません。ユーザー数ごとの課金(Gemini Enterpriseは中小規模向けでユーザー1人あたり$21/月、大規模組織向けで$30/月)である以上、使わない人が多ければ、その投資判断は無駄になるでしょう。

重要なのは「全社員にAIを配ること」ではなく、「会社としてAIを使える共通基盤を持つこと」だと私は考えています。同時に、各社ここに苦労しているようにも感じます。

ただし、そう重く捉えなくても良いのではないか、という意見もイベントの中でありました。次のセクションでもお話ししますが、AIで業務効率化をするためには、確実に現場目線が必要です。それがダークデータに手を伸ばすことにもなります。もちろん経営判断としてKPIやROIが必要なことはあるかとは思いますが、そのためにもまず使ってみるということの重要性は高そうです。

AIエージェントを誰が管理するか問題

それから、AIエージェントを誰が作るのか、どこで管理するかという問題もあります。Googleが提供する標準エージェントだけでは、各社固有の業務には届きません。一方で、全社員が自由にエージェントを作れるようにすると、今度は野良AIならぬ野良エージェント問題が起きます。どのデータにアクセスできるのか、誰が保守するのか、退職後どうするのか、プロンプトインジェクション(悪意あるチャット送信)に耐えられるのか。ここには明確な統制が必要です。

おそらく今後は、情シスやAI CoEの役割も変わると思います。全エージェントを中央で作って管理するのではなく、現場が安全にエージェントを作れるガードレールを整える役割になります。例えば、部署ごとに作って統制するとか。AIもマイクロマネジメントが必要になる気がします。個人用・部門用・全社用の公開範囲、利用ログ、コスト監視、棚卸し。こうしたAgentOpsの設計が、AI活用の成否を分けるのではないかと推察します。

AIハイパーコンピュータ

今回のイベントでは、AIエージェントだけでなく、その土台となるインフラやデータ基盤の話も多かったです。AIハイパーコンピュータ、第8世代TPU、GPU/TPU、Managed Lustre、GCS Rapid、Smart Storage。(私はインフラに詳しくないので、そこまで凄さがわからなかったです。)AI時代には、データセンター全体が1つのコンピュータのように扱われるという話は印象的でした。

データベース

データ面でも、Google Cloudの打ち出しは強かったです。Agentic Data Cloud、Knowledge Catalog、Cross-Cloud Lakehouse、Spanner Omni、BigQuery、AlloyDB。企業データの多くはダークデータや非構造化データであり、AIエージェントが価値を出すには、それらに意味づけされた形でアクセスできる必要があります。単にデータがあるだけでは不十分で、「このデータは何を意味するのか」「どの指標が正しいのか」「どの部門が使っているのか」というコンテキストが必要になります。

GovTech Tokyoの事例では、能登半島地震を通じた行政デジタル化の重要性が語られていました。災害時のアクセス集中、リアルタイム性、可用性を考えると、Spannerのような基盤が評価されるのも自然です。AIの話は華やかですが、実際に社会実装するには、止まらないデータ基盤が必要になります。

セキュリティ

AIを語る上で、セキュリティの話も重要になります。プロンプトインジェクション、危険なMCP接続、Model Armor、Agent Identity、Agent Gateway、CodeMender。AIエージェントは外部ツールや社内データにつながるほど便利になりますが、その分だけ攻撃面も広がります。AIが何を見て、何を判断し、何を実行できるのかを管理することは、これからの時代に避けられないテーマになります。

AIモデルの質とコスト

さらに、AIコストの話も現実的でした。Tokenomics、maxOutputTokens、count_tokens、Thinking Budget、キャッシュ、PayGoの選択、Agent Observability。AIは賢いモデルを使えばよい、データをたくさん入れればよい、という単純なものではありません。出力トークンは高く、推論設定によってコストもレイテンシも変わります。AIを全社展開するなら、コストを可視化し、モデルやキャッシュを制御する仕組みが必要になります。

またGeminiモデルにおいては、出力されるTokenの単価は、入力されるTokenの単価の5~6倍必要になる、という話は寝耳に水でした。AIモデルを従量課金で使用する場合は、出力されるTokenをある程度制限するとコスト爆発を軽減できそうです。

AWSとGCPの違い

こうして見ると、AWSとGCPの違いもイベントを通して見えてきます。AWSは、AIエージェントを作るための部品が非常に強い印象です。開発力のある企業にとっては、Bedrockを中心に自由度高くシステムへ組み込めます。一方でGCPは、Gemini Enterpriseを全社員の入口にして、社内データ、SaaS、他クラウド、エージェント、セキュリティ、観測性をまとめて扱う方向に見えます。(私はAWSよりもGCPの経験の方が多いです。)

2つのイベントを見て思ったことは、AIやクラウドに詳しくない企業にとって、初手として分かりやすいのはGemini Enterpriseかもしれないな~、ということです。自前でRAGやMCPを組まずとも、まずは社内情報に安全につながるAIの入口を持てるからです。そこから社内検索、議事録、資料作成、問い合わせ対応、部門別エージェントへ広げていく道筋が描きやすいからです。

事例紹介

①KDDI株式会社

同社は高輪ゲートウェイ駅にあるローソンにおいて、デジタルサイネージならぬAIサイネージを導入しているそうです。そしてそこで使用しているAIには、GoogleのAIモデルが使用されているとのことでした。(Gemini-3.5-flashなど)

お話を伺ったところによると、例えばエンドユーザーがおにぎりの販売コーナーで何を選ぶか迷っている時に、カメラがリアルタイムで分析して、何秒か迷った後に「今日は⚪︎⚪︎おにぎりがおすすめです」や「ご一緒にお茶はいかがですか」というような販売促進を、音声でしてくれるとのことでした。

②野村総合研究所

とある時間のブース公演にて、「チャット形式が古くなる可能性がある」という趣旨のお話がありました。背景には、入力方法の違いによる情報量と速度の話があります。

私たちの多くは、AIチェットへ手入力でプロンプトを打っている人が多いかと思います。私も9割くらいそうです。ただ、これはプロンプトだけに限らず文字入力という部分について、テキスト入力よりも音声入力の方が生データに近く、入力速度や情報量も速いし多い、というお話がありました。これはまさしくそうだなと思いました。

音声入力で懸念されているのは、文字の誤変換だったりしますが、最近のAIの文字起こし機能はこの誤変換もしっかり誤変換だと認識して変換してくれることが多いので、質的には問題ないことが多い、というお話もされていました。

確かに音声入力が主流になれば、チャット形式である必要は薄れる気がします。もちろんChatGPTに慣れている人はこのチャット形式の方が馴染みがあるという意見は出るでしょうが、この普遍性もAI時代では簡単に壊されるでしょう。

③キリンホールディングス株式会社

同社では、菌体識別にAIを使用したという事例発表がありました。これまでは3000万円もする菌体識別機器を使用していたとのことですが、今回開発したこのAIを使用することで、この機器を使用しなくても同じ効果が実現できたとのことでした。ただレスポンスが速いのは3000万円の機器らしく、回答速度については同AIシステムでは少し待つ必要があるとのことでした。

またデータについては、ビッグデータを使用して、事前にクレンジングしたものを機械学習させたとのことでした。何年か前に、Gemini Nano Bananaがリリースされた当初、小銭をばら撒いて何円硬貨が何枚あって、合計いくらになるか、みたいな検証を多くの人がしていて、その時は誤回答することがほとんどでした。今回はその機能を使ってはいないみたいです。

ぞれからなぜGCPを選んだのか、ということも聞いてみました。現在私が悩んでいることとして、AI機能をAWSで実装するかGCPで実装するかというものがあり、その点について知見を伺いたかったからです。答えは「コストの安さ」ということでした。これについては私も同意で、ほとんどのモデルは、基本的な機能や質というのはそれほど違いはないという実感があります。

Google Cloudは5年くらい前まで、エンタープライズ向けには弱いという市場評価がありましたが、キリン社をはじめ多くの企業が今回のイベントに参列・出展していました。そのため、この評価というのも覆されつつあるのかなと思います。

そのような意味で、今回のお話はタイムリーで非常に貴重なお話だったと感じています。

さいごに

今回のGoogle Cloud Next Tokyo 26で感じたのは、GCPが単なるクラウド基盤ではなく、「AIエージェント時代の企業OS」を取りにいっているということです。モデル、データ、インフラ、セキュリティ、エージェント、SaaS連携をまとめ、企業がAIを全社展開するための最短ルートを提示しているように感じました。

もちろん、導入すれば自動で業務変革が起きるわけではありません。データ整理、権限設計、AgentOps、現場教育、コスト管理は必要です。それでも、AI活用の初手を簡単にし、企業内データを安全にAIへ接続するという意味で、今後GCP、特にGemini Enterpriseはかなり強いポジションを取るのではないかと感じました。

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